体育学部 教授
杉田 正明先生
採択教材
入学前に重要なのは「大学でやるべき事の意識付け」
現役引退後の“豊かなのキャリア形成”を目指せる環境へ
■ 日本でのデュアルキャリア教育は、現在どのような状況ですか?
杉田 正明先生(体育学部 教授)
日本でもようやく今、例えば医師でありながらオリンピック選手になる人、あるいは、現役時代は競技に専念し、引退後、歯科医になるため歯学部へ入学するといった事例も増えてきました。元ラグビー日本代表の福岡堅樹さんが、選手引退後、医学部へ入学した例もあります。
高校卒業後に医学部へ入学し医師になるというのは一つの道筋ではありますが、現役時代は一生懸命スポーツに打ち込み、引退後に次のステップを目指すというやり方も当たり前になってきました。必ずしも高校卒業後に医学部へ入学しなければならない訳ではなく、途中から目指すという道筋もあります。自分はどこからでもそこへ行けるんだと、昔からある、こうでなければならないというような意識がようやく変わってきました。
いろんな選択肢がある中で、現役時代をしっかり終えてから大学へ行く、教員免許、栄養士の資格を取得するなど、色んな形で自分のやりたい事に挑戦出来るような環境が整ってきた段階だと思います。
体系立てて作られた“入学前教育プログラム”が無かった
■ 入学前教育プログラムの導入の経緯を教えてください。
杉田 正明先生(体育学部 教授)
入学前教育プログラムというと、本学ではこれまで、「本を読んできなさい」というような課題を学部長と学科長が毎年相談しながら実施していた状況で、体系立てて作られたプログラムがありませんでした。
そこで、「せっかくUNIVASに加入していて、そういった学生を対象に作られたプログラムがあるのだから、積極的に使えば良いのでは」と考えたのが導入の経緯です。入学後より入学前に、大学のイメージであったり、大学でやるべき事をしっかりと意識した上で入学してもらおうという意図があります。
入学前教育プログラムで「事前にマインドセット」する事の重要性
■ プログラム導入の目的には、入学前のマインドセットという狙いもありますか?
杉田 正明先生(体育学部 教授)
本学の入学前教育プログラムの対象者は、トップアスリート、スポーツ選抜で入学してきた学生です。まず大学での運動部学生の学びとはどういう事なのかをハンドブックなどそういったもので、入学前にマインドセットをしておく必要があります。
「大学に入学したら、運動部も勿論頑張るけれど、勉強も頑張らないといけないんだ」という事をしっかり意識付けさせたいという狙いがあります。
大学時代にしっかりと身に付けて欲しい「物事の考え方」
■ 回のような入学前教育プログラムが無かったという事以外に、学科長としての苦悩されていた事はありますか?
杉田 正明先生(体育学部 教授)
幅広い学力レベルの学生が入学してきますが、最低限、学生としてやるべき事はしっかりと理解して欲しいです。例えばレポートを提出する事や、当然、授業に出席する事など。
それから、諸外国の中ではアスリートライフスタイルという言葉があります。トップを目指すなら色々やらなければいけない事もあるけれど、「今の自分にとって最適・必要なものは何なのか」という事を理解し実践していきながら、アスリートとしてのライフスタイルを確立させていく事が最も大切です。
そういうPDCAサイクル、「常に自分で課題を探してそれを解決したり、あるいは方法を考えたり自分で決めたりして実行していく」という事をどこかでしっかり学んで欲しいと、以前から思っていました。物事の考え方みたいな事は、やはり大学時代にしっかりと身に付けて欲しいと思っています。
学生時代の内に少なくとも「自分は競技を辞めたらこういう方向で行きたい」という風に、何に向いてるか、自分はどういう人間なのかを早い段階でしっかりと気づいてほしいと思います。やはり1年、2年の間でそういった方向性をしっかり決め、3年、4年はそれに向かって進む。例えば教員になるなら、教員採用試験の対策、公務員になるなら公務員試験の準備が必要です。何となく1年ダラっと過ごして、3年、4年になって本気になるという事では、手遅れになる可能性が高いです。やはり、次の自分のライフステージをしっかり見定めるのは、1年、2年でやって欲しいと考えます。
「大学に入るということとはどういう事なのか」がきちんと示されている教材
■ 入学前教育プログラムを導入後の感想をお聞かせください。
杉田 正明先生(体育学部 教授)
受講者からは、入学後の学修のイメージがよく分かった、入学が楽しみになったという感想も結構ありました。
教科教材の方は、いつでもどこでもできる物ではあると思います。読み物教材に関しては、「体育大学で本格的に運動部活動をするということはどういう事か」がきちんと示されていて、本学の学生にマッチすると感じていたところです。その心得であったり、大学に入ることとはどういう事なのかを読み物教材を通してではありますが、きちんと教えてあげた方が、大学の中での自分の過ごし方についてのアイデアや知恵も深まるのではないかと思っています。
読み物教材、「スポーツの知」や「学びのハンドブック」は非常に良い教材だと感じています。スポーツって、全て詰まっているんですよね。歴史も文化も、フェアプレー、動作の分析、生理学的なもの。色んな分野が詰まった、1教材としては非常に魅力的な教材だと思います。