日本文理大学様

運動部学生の持つ経験を活かして、学びへのモチベーション向上を

吉村充功先生

日本文理大学副学長/教育推進センター長/工学部建築学科教授
吉村充功先生
使用教材:運動部学生のためのスポーツ探究ことば入門

学業とスポーツに別で取り組むのではなく、活かし合うことが重要

今回教材を導入することになった経緯を教えてください。

本学では従来、スポーツ推薦や総合型選抜で入学してくる学生たちに入学前教育を課してきました。今はeラーニングで国語・数学は必須、他教科は任意で設定しており、それに加えて教育理念の一つである人間力の育成への理解を目的とした作文課題という内容でした。
ただ、スポーツ推薦で入学する学生たちに関して、学業とスポーツ(部活動)が切り離されていることを課題に感じていました。運動部活動に取り組む学生は非常に質のいい経験をしてきていますし、コンピテンシーも高い傾向にあります。そんな彼らの強みを生かしながら、経験を言語化していくことで学習へのモチベーションを上げていくことがうまくできないかなと考えていたんです。
そんな中で『ことば入門』を案内していただいて、まさに求めていた内容をそのまま教材にしていただいていると感じました。であればぜひ実践してみて、学習効果があるかどうか、学生の反応を見たいと思い、即導入を決めました。

採点は敢えて部活動指導者が担当し、学生を理解するきっかけに

入学前教育はどのように運用されましたか。

スポーツ推薦の学生を対象にした入学前教育は、国語・数学のeラーニングはそのまま継続し、作文課題をこの教材に替えました。
先ほど、学業とスポーツ(強化スポーツ・部活動)が切り離されていると申しましたが、実は学生だけでなく、教員や監督をはじめとする指導者もそういう意識になる傾向が見受けられました。そこで、今回、採点を指導者に任せることで自分の部活動の学生がどのような経験をし、どのような考えを大切にしてきたのか、何を求めているのかなど、言語化・システム化された教材を通じて、指導者にも知ってほしいと、持ちかけてみたのです。
学生にとっても、指導者が採点すると伝えることで、良い意味でのプレッシャーになるのではないかという狙いもありました。
組織的には教員と指導者が連携し、学生にはしっかりと学んでほしいという想いを共有し、この仕組みを作りました。

指導者の方からどのような反応がありましたか。

まだ、フォローアップが十分できていませんが、関わった職員の意見を聞いてみると、かなり評判が良かったということです。
指導者も、一人ひとりの自己実現と大学生活の充実のために、「学業と競技活動を繋ぐこと」は大切だと考えられていたこともあり、教員と協働して実施することが出来ました。指導者1人当たり10~15人程度の学生を担当いただくのが適当だと思います。

提出状況のフォローも指導者の先生方が行われたのでしょうか。

指導者には採点だけをお願いし、提出状況のフォローは教職員で行いました。提出率としては、回によってばらつきはあるものの、9割以上の学生が提出してくれました。やはり、競技への想いが強いだけに、指導者が確認するというのは効果的であったと思います。

期待以上の反応。今後は入学後にも活用し、さらなる連携を

学生様の反応や導入の効果について、どのように見ていらっしゃいますか。

学生にアンケートをとったところ、教材を通して、経験や自分の価値観を表現するのは難しかったという声は多かったです。
その一方で、9割の学生が「この教材で学んだことを競技にも活かせると思う」と回答しました。我々としては、これを一番期待していたところですが、期待以上の成果であったと思います。「自分の今までのスポーツ経験を明確に振り返る時間も機会もなかったのでよかった」という声もありました。
幼い頃から同じ種目のスポーツに取り組んできた学生も多いのですが、しっかり言語化できたことの意義は予想以上に深いものであったと思います。

グラフ

参考資料:日本文理大学を含め、入学前教育でことば入門を受講した大学の学生へ調査。回答数:246

今後の活用についてはいかがでしょうか。

今回、1月~3月のおおよそ2か月半で取り組んでもらいましたが、入学後にもう少し時間をかけて取り組んでもよいかなと考えています。
入学前教育では指導者が採点をしましたが、担任や専門分野の教員、さらには出口である就職関連の担当職員にも繋げていきたいと考えています。
本学には初年次教育の必修授業があるので、そこで活用できると期待しています。スポーツ推薦の学生と一般学生の混成授業では、なかなか授業が進めにくいという教員の悩みもあったのですが、この『ことば入門』の教材を活用すれば、教育効果があがるのではないかと思っています。しっかりと一人ひとりの学生に向き合いながら、学内で多くの教職員を巻き込んだ議論をしていきたいと思っています。

2023年05月25日
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