法政大学様

保健体育センター 市ヶ谷体育課
釜野 祥太朗様

採択教材

 

学習習慣が身に付いていない学生には、指導も “暖簾に腕押し”

■ KEIアドバンスの運動部学生向け支援プログラムを導入された背景には、どんな問題があったのでしょうか。

釜野 祥太朗様(保健体育センター市ヶ谷体育課)

本学には毎年200名弱の学生がスポーツ推薦で入学してきます。その中には、高校時代の全てをかけてスポーツに打ち込んできたために、学習習慣があまり身に付いていない学生も多いのです。大学は高校までと違って手取り足取り勉強を教える場所でもないので、自ら勉強していく意欲を持っていなかったり筋道を立てて物事を考える方法を知らなかったりすると、どうしても苦戦してしまうんですよね。大学に入っていきなり「デュアルキャリア(競技と学習の両立)を目指そう」と言われても、何から手をつければいいのかわからない学生が一定数いて、これが一番大きな問題でした。

教員からも、「勉強の指導をしようとしても、そもそもの習慣が身に付いていないとサポートしきれない」という声をよく聞いていました。受験を通して勉強の仕方を身に付けていることを前提とした普段の指導方法では、一部の学生に対しては “暖簾に腕押し” だと。スポーツ推薦で入学する学生は全体の3%ほどなので、教員にとってそういった学生を指導する機会は多くなく、ノウハウも蓄積されづらいので、すぐにお手上げ状態になってしまっていました。

■ これまで大学では運動部学生の学習に対してどのようなサポートをされてきましたか?

釜野 祥太朗様(保健体育センター市ヶ谷体育課)

本学では、多くの学部にまたがる形で、スポーツ推薦で入学した学生だけが受けられる「スポーツ・サイエンス・インスティテュート(SSI)」というコースを設置しています。スポーツ推薦で入学する運動部学生のほとんどがこのコースに入るのですが、それでもやはり苦労する学生が多くて、どう手を加えたらいいのかと悩んでいました。

そんな中で、UNIVASがKEIアドバンスとともに提供するプログラムのモデル大学を募集していたので、手を挙げ、導入に至りました。

 

運動部学生にフィットした「ちょうどいい」教材

■ 導入されたのはどのようなプログラムですか?

釜野 祥太朗様(保健体育センター市ヶ谷体育課)

学びのモチベーションを向上させるための「導入教材」というものを、入学前の学生に配布して取り組んでもらっています。

中でも「大学の運動部学生のための『学び』のハンドブック」は、内容が秀逸だと教員の間で話題になっています。大学の勉強の必要性や学ぶ意義、またそれをどのように卒業後に生かしていけるかなど、学生に伝えたいことが満遍なく凝縮された一冊です。プロのアスリートが大学の勉強の重要性を語るインタビューも載っていて、学生にはかなり響くのではと思います。カラフルで読みやすく、教材っぽさがない面白い作りになっているので、机に向かうのが苦手な学生にも「まずこれだけは」と勧められますね。

各科目のテキストも、難易度が運動部学生にとてもよくフィットしていると感じます。教員からは、「少し易しすぎるのではないか」という声も上がったのですが、実際にプログラムに取り組んだ学生にインタビューしてみると「ちょうどいい」という声が多かったです。きちんと運動部学生のレベル感を汲み取って作成されている教材なので、学生がつまづくことなくこなせたのはとてもよかったと思います。

入学前教育プログラムを実施する意図は、学力を高めてから入学してきてほしいということよりも、勉強に対する意欲を持ってもらいたい、重要性を知ってほしいというところなんです。ですから、高いレベルのものを提供して学生が挫折してしまうというのは本意ではなく、このような学生にフィットした教材は非常に助かります。

 

競技のプロになれなくても、道に迷わないように

■ コロナ禍において、このプログラムを導入してよかったという点はありますか?

釜野 祥太朗様(保健体育センター市ヶ谷体育課)

授業がオンラインになったことで事前・事後課題が増え、学生はかなりの時間を勉強に割かなければならなくなっています。入学前教育プログラムを行っていなければ、このような状況に例年以上に苦戦してしまう学生が続出していたかもしれません。勉強の重要性や、勉強の計画の立て方を事前に学んでおいてくれたおかげで、うまく乗り越えられているのではないかと感じます。

■ 大学として、プログラム導入の意義はどんなところにあると思いますか?

釜野 祥太朗様(保健体育センター市ヶ谷体育課)

以前、卒業して10年目の元運動部学生約200人にアンケートを取ったのですが、そこで多かったのは「社会に役立つ能力を持って大学を巣立ちたかった」という意見でした。それに応えるための土台として、このようなプログラムは重要だと思っています。大学の4年間、彼らは競技者として大成することを目標に競技に取り組みます。しかし、全員が全員プロフェッショナルになれるわけではない。卒業後に別の道を歩むことになった場合でも、道に迷わないような状態で社会に送り出すことが大学の責務であると思っています。

本学は総合大学なので、9割以上は運動部以外の学生です。いくら体育会に力を入れるといっても、大学にはいろいろな学生がいるので、それぞれに均等にリソースを割かなければならない。でも一方で、「練習により学習時間が十分に取れない」「学習習慣の要領が掴めていない」などで苦労することが多いのは運動部学生だという事実があり、そこが大学として難しいところです。そういった中で、第三者にサポートしていただけるというのは大変助かります。

大学は、ひとりひとりへのサポートの手厚さという点では、どうしても中学や高校と比べると強くない部分があります。しかし、学生が社会に出る前の手助けをしてあげられる最後の組織という立場にあるので、運動部学生が埋もれていくのを決して見過ごすわけにはいきません。身近で見ていると、運動部学生は本当に大変なんですよ。だから、より効率よく学びを深めるためにもプログラムを活用できたことはよかったと思っています。

 

 

written by 新原なりか

2022年06月09日
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